トレチノインとは?
トレチノインとはビタミンA(レチノール)の誘導体で、生理活性はビタミンAの約100倍です。
トレチノインは、誰でも血液中にごく微量流れていて、アレルギー反応を起こすことはありません。
トレチノインは米国ではシワやニキビの治療薬としてFDAに認可されており、皮膚の若返り薬として使用されています。
日本では認可されておりませんが、当院では改良を加えたCDトレチノインを処方しております。
トレチノインがシミ治療に有効な理由
皮膚は、大きく分けて一番上から「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造になっています。
表皮の細胞は表皮の一番深い層(基底層)で生まれてから、徐々に表面に押し上げられてきて、やがて角質となり、最後は垢となって皮膚からはがれていきます。
これを「皮膚のターンオーバー」と呼び、若い人で約4週間かかります。
紫外線によるシミや肝斑、ソバカスは、基底層周辺にメラニン色素が沈着しています。この層にはメラノサイトと呼ばれるメラニンを作る細胞があります。
ハイドロキノンは、メラノサイトがメラニン色素を作るを減らす働きを持ちますが、皮膚に沈着しているメラニン色素を排出する作用はありません。
トレチノインは、基底層にあるメラニン色素を外に排出する働きを持っています。トレチノインにより表皮の細胞はメラニン色素と共に皮膚表層に押し上げられていき、約2週間でメラニン色素を外に出してしまいます。これがトレチノインの特長です。
セラピューティックプログラムでは、メラノサイトがメラニン色素を作るのをブロックするハイドロキノンと、皮膚に沈着しているメラニン色素を外に排出するトレチノインを一緒に使うことでシミを治療します。
お肌の加齢変化
- シミやくすみが生じる
紫外線を慢性的に浴びた結果、メラニンが過剰につくられ皮膚に蓄積することでシミやくすみが生じます。加えて、加齢の影響で表皮のターンオーバーが遅くなると、表皮に存在するメラニンの排出が悪くなり、シミやくすみが残る原因となります。 - 皮膚が乾燥する
角質の働きが鈍ることによりバリア機能が低下し、お肌に水分を保つことができなくなります。皮脂の分泌が減る影響も重なり、皮膚は乾燥します。 - お肌にハリがなくなりシワができる
紫外線の影響で真皮に存在するコラーゲン線維が変性し減少するため、深いシワができます。お肌は弾力を失い、ハリがなくゴワゴワした質感になります。
トレチノインの特徴
表皮のターンオーバーを促進
ターンオーバーを促進し、表皮に溜まったメラニンの排出を促します。メラニン産生を抑えるハイドロキノンとの併用により相乗効果がみられ、シミが改善されます。
臨床効果:シミや色素沈着の改善、ニキビ
皮膚にヒアルロン酸を沈着
表皮の細胞間や角質にヒアルロン酸の沈着を促すため、肌理(きめ)が整い小ジワが目立たなくなります。
臨床効果:肌のきめ、小じわ
コラーゲン線維を増やす
真皮のコラーゲン線維をつくる細胞(線維芽細胞)を活性化し、お肌の弾力を高め、ふっくらとハリのあるお肌へと導きます。
臨床効果:皮膚のハリ・弾力アップ、小じわ
さらに、ニキビにも効果的です!
ニキビは、毛穴が詰まり、皮脂の分泌が増えることから始まります。
トレチノインは角質を剥がすことで毛穴の詰まりを改善し、皮脂の分泌を抑える作用を併せ持つことで、ニキビに対する治療効果も期待できます。
- 炎症性の赤いニキビ
- ニキビ跡
- ニキビによる色素沈着
に有効です。
使用上の注意点
レチノイド反応について
トレチノインを塗ることで、お肌のターンオーバーが速くなり、角質の排出が活発になるため、皮剥け(落屑)が生じます。また、角質が剥がれることで、お肌のバリア機能が低下するため、刺激を感じやすくなり赤みや痒み、乾燥症状もみられます。 これを『レチノイド反応』と呼びます。
レチノイド反応のピークである最初の3週間程は辛い時期ですが、治療の通過点であり、効果が出ている証拠ですから、がんばりましょう。
ただし、治療中はお肌の反応を見ながらトレチノインの使用量を適宜調整することも可能ですからご安心ください。
紫外線対策について
治療中は日焼け止めを塗るなど、しっかりと紫外線対策をしてください。また、乾燥症状が強いときは日中に保湿ケアをしていただくことをお勧めします。
使用期限について
トレチノインは酸化されやすいため、時間が経つと効果が期待されなくなります。トレチノインの保管方法や使用期限は、医師の指示に従ってください。
トレチノインを使えない方
妊娠中の方、授乳中の方もしくは妊娠の可能性がある方は、トレチノインはお使いいただけません。
よくあるご質問
レチノイド反応はいつまで続きますか?
トレチノインの塗布を続けると、最初にみられた皮剥け(落屑)や赤みなどの皮膚炎(レチノイド反応)は次第になくなっていきます。これはお肌がトレチノインに対する耐性を獲得するからです。どのくらいの期間でレチノイド反応が落ち着くかは個人差がありますが、通常最初の1カ月程度がピークで、その後は徐々に反応が軽減します。
お化粧は可能ですか?
レチノイド反応が生じる治療初期にもメイクはできますので、赤みなどをコンシーラーやファンデーションで隠すことも可能です。ただ、皮剥け(落屑)が生じている時期はお化粧崩れが目立ちますのでご了承ください。
乾燥症状が強いときはどうしたらいいですか?
トレチノインを塗布してから時間をおいて保湿剤を使用しても大丈夫です。日中に保湿ケアを追加していただくと乾燥症状は和らぎますので、お試しください。
トレチノインを塗り始めても皮剥けがおこりません。
通常、トレチノインを塗り始めて2、3日後からレチノイド反応が始まります。1週間塗っても、まったく皮剥けが生じない場合は、トレチノインを朝晩の2回塗ってください。それでも赤みや皮剥けが生じない場合は医師にご相談ください。