原発性腋窩多汗症とは
汗の量が多くなる原因となる病気などがないのにもかかわらず、多量のわき汗に悩まされる疾患です。
原発性腋窩多汗症の診断
シャツに汗染みができるなど、日常生活に支障をきたすほど多量のわきの汗が、明らかな原因がないまま6ヵ月以上みられ、以下の6症状のうち2項目以上あてはまる場合を「原発性腋窩多汗症」と診断します。
【原発性腋窩多汗症の診断基準】
✔ 最初に症状がでるのが25歳以下であること
✔ 左右両方で同じように発汗がみられること
✔ 睡眠中は発汗が止まっていること
✔ 1週間に1回以上多汗の症状がでること
✔ 家族にも同じ疾患の患者さんがいること
✔ わき汗によって日常生活に支障をきたすこと
原発性腋窩多汗症の治療薬
エクロックゲル
特徴
エクリン汗腺は、皮膚の中にある汗をつくる器官のひとつで、主に体温調節のために、水分の多い汗を分泌します。多汗症の症状である多量の汗は、主にエクリン汗腺から出ています。
エクロックゲルは、有効成分が皮膚から浸透して、エクリン汗腺の交感神経から発汗の指令を受け取る部分をブロックすることで(発汗に関与する神経伝達物質であるアセチルコリンのムスカリン受容体への結合を阻害)、発汗を抑えることが期待できます。
使い方と使用上の注意
使い方
1日1回、左右のわきにそれぞれポンプ1押し分の薬液を塗布します。
次の人は、この薬を使用することはできません。
・閉塞隅角緑内障の患者
・前立腺肥大による排尿障害がある患者
・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
次の人は、特に注意が必要です。使い始める前に医師に相談してください。
・前立腺肥大症のある人
・塗布部位(脇の下)に傷や湿疹・皮膚炎等のある人
・妊娠または妊娠している可能性のある人
・授乳中の人
副作用
皮膚炎、紅斑、そう痒感、湿疹、刺激感、口喝、排尿障害等
※この薬には、アセチルコリンの作用を阻害する作用(抗コリン作用)があり、眼の調節障害(まぶしい、霧がかかったような見え方)があらわれることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作を行う際には注意してください。
ラピフォートワイプ
特徴
作用機序はエクロックゲル🄬と同様、発汗に関与する神経伝達物質であるアセチルコリンのムスカリン受容体への結合を阻害し、汗の産生を抑制します。
エクロックゲルとの違いは、ラピフォートワイプは「ワイプ=拭く」を意味するように、1包に封入されている不織布1枚を用いて薬液を両腋窩に塗布することです。1回使い切りのワイプ製剤のため、簡便かつ衛生的に使用することが可能です。
エクロックゲルとラピフォートワイプの使い分け
エクロックゲルもラピフォートワイプも、どちらも腋窩多汗症の治療薬です。
作用機序も同じで、発汗に関与する神経伝達物質であるアセチルコリンのムスカリン受容体への結合を阻害し、汗の産生を抑制します。
1日1回の使用方法も同じですが、主な違いは二つ。
その1
エクロックゲルはゲル状であり、アプリケーターの上面に薬液をのせて、わきの下に塗布します。使用量は、右わきにポンプ1押し分、左わきにポンプ1押し分です。
ラピフォートワイプは、1 包に封入されている不織布 1 枚を用いて薬液を両方のわきの下に塗ります。
その2
使用可能年齢が異なります。エクロックゲルは12歳以上から。ラピフォートワイプは9歳以上からの使用となります。